第58章 鶴丸の願い
節子のこと。
本丸での日々。
一面に広がる秋桜。
戦場での戦い。
鶴丸。
次の審神者との日々。
仲間内での殺し合い。
殺した審神者の最期の顔…。
「俺は…!」
唐突に蘇った強い憎しみ。
怒り。
悲しみ。
「人間が憎い…!何故…!何故…!」
ー俺達を虐げる!!
三日月はふと顔を上げた。
すると鶴丸の後ろには人間が。
「要らない…。人間は要らない。消えろ…!消えろ!」
三日月は腰に差してあった自身の刀をすらりと抜くと、レンに向かい構えた。
「すっごい既視感…。」
レンは面倒そうに言って立ち上がり、鶴丸と距離を空ける。
「問答無用!」
言うや否や三日月は斬りかかった。
レンは素早くクナイを抜くと受け止める。
「「「レン!」」」
叫びに近い刀剣達の声が響く。
「心配なら入り口開けといてください…!」
レンはクナイで刀を押し戻し振り払うと、三日月の攻撃を避けながら表に飛び出る。
「氷遁、氷柱槍。」
レンは、追いかけて来た三日月目掛けて数本の槍を投げつけた。
「ぐ……!」
三日月は1、2本は避けられたものの、残りを喰らい腕を負傷する。
顕現したばかりだからだろうか。体が上手く動かせないようで、膝をついてしまう。
「まだやりますか?」
レンは三日月から少し距離を置く。
「人間の分際で…!」
三日月は負傷した腕を押さえながら立ち上がる。
「まだやるんですね…。」
レンは至極面倒そうに後ろ頭を掻いた。
「俺を愚弄するか!」
三日月は刀を構え直すと再びレンへ斬りかかる。
「小娘のお前に何が出来る!?」
ー何もせず、審神者を笠に着て威張り散らすだけの小娘に!
「お前達人間が何故我等を使役する!?」
ー人の姿をとっても俺達は所詮物でしかないのか!
「我等は付喪神だ!お前達の玩具ではない!」