• テキストサイズ

君に届くまで

第58章 鶴丸の願い




鶴丸とレンの視界は薄紅色に覆われる。
レンは鶴丸からそっと手を離し、花吹雪が止むのを待った。

やがて視界が開け、花びらが収束して人の形を取り、弾けた。

「これが…。」

「あぁ。三日月宗近だ。」

レンの呟きに、震える声で鶴丸が答えた。

鮮やかな群青の衣に煌びやかな金の装飾。
中央の金の月の重なりは青に映えて一層際立つ。

何よりも際立つのはその面立ちだった。
美醜に頓着しないレンでもその美しさにはっとする。
大きな形良い目に、長いまつ毛。
金の混じる不思議な色合いの瞳。
すらりと引かれた眉。
すっと通った鼻。
形良く綺麗な色合いの唇。
陶器のような白い肌。
どれをとっても文句の付けようがない。

三日月は、ぼーっとしているかのように、何も発することなく、静かに佇む。

「三日月。」

鶴丸が呼びかけると、ぼんやりとした瞳は、ひたと鶴丸を見据えた。
鶴丸はごくりと唾を飲む。

ー覚えているのだろうか…。

「俺が、わかるか…?」

鶴丸は、震えそうになる声を気力で抑えた。

「鶴、か…。」

「あぁ。鶴丸だ。…何があったか、思い出せるか?」

鶴丸は、そっと問いかける。

ー頼む…。覚えていてくれ…。

「俺は…。」

三日月の脳裏に様々な記憶が掘り起こされる。

彼は手でゆっくりと片目を覆った。
/ 1263ページ  
スマホ、携帯も対応しています
当サイトの夢小説は、お手元のスマートフォンや携帯電話でも読むことが可能です。
アドレスはそのまま

http://dream-novel.jp

スマホ、携帯も対応しています!QRコード

©dream-novel.jp