第58章 鶴丸の願い
部屋の外には、ちらほらと刀剣達が集まって来ていた。
鶴丸が部屋に篭ってからかなり経つ。
「鶴の旦那は何やってんだ?」
薬研は近くにいた加州に尋ねる。
「三日月の手入れだって。」
「手入れをしてるのか?旦那が?」
加州の言葉に目を丸くして彼を見た。
「レンの思いつきらしいよ。俺もよくは知らない。」
加州は首を傾げながら言う。
「へぇ…。」
薬研は答えながら、再び中にいる2人に目を向ける。
刀身は既に3分の2程出来ているだろうか。
「何やってんだ?」
大倶利伽羅が来た。
彼は今日の近侍を務めている。
「三日月の手入れを旦那がしているんだと。」
薬研が説明する。
「レンの思いつきか?」
「みたいだね。」
加州が答える。
「う、上手く、いくでしょうか?」
「最近、根詰めてたからな…。」
「でも、出来てきている。あともう少し。」
最初の方からいた、五虎退、厚、小夜は手に汗握りながらじっと見守る。
「なになに?」
「どうかしたのかい?」
乱と燭台切もやって来た。
「なんだなんだ?」
「何してるの?」
「何かあったんですか?」
獅子王と大和守と小狐丸もやって来た。
見れば、いつの間にか全員揃っている。
「三日月の手入れを鶴丸がやってるんだって。」
「鶴丸が?」
「レン、煮詰まったの?」
「思いつきだとさ。」
加州、大和守、乱、薬研が話をし、他の面々も話し出す。
そうこうしている内に部屋に桜の花びらが吹雪いた。