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君に届くまで

第58章 鶴丸の願い



鍛刀部屋へ着くと、レンは自身が座っていた場所へと鶴丸を座らせる。

鶴丸は訳がわからず、三日月の柄と玉鋼とを見比べる。

「なぁ。今から何をするんだ?」

鶴丸が問いかけると、レンは鶴丸の背中、やや首に近い場所に手を当てる。

「あなたが修復してください。私が補助しますから。」

「いやいや、ちょっと待て!刀の俺が刀を修復しろと言うのか!?」

「あなたなら拒絶されないかもしれないでしょう?」

レンの言葉に鶴丸は身を強張らせる。

「…拒絶…されてるのか…?」

「わかりませんが。何の反応も無いところを見れば、無きにしもあらずってことです。現に小夜さんの時にも玉鋼を消費すれど修復は見られませんでした。」

「……。」

鶴丸はそっと三日月の柄に触れた。
顕現してほしいという想いは、我が儘なのだろうか。
会いたいという想いは、三日月を追い詰めはしないだろうか。
俄に不安が込み上げる。

「何にせよ。どんな形であれ刀が残ってるってことは、何かあるんじゃないですか?」

レンは鶴丸の気持ちを知ってか知らずか、ぶっきらぼうに言う。

「…何か、って…、何だ?」

鶴丸は気分が沈んだまま、レンに問いかける。

「わかりませんよ、そんなの。だから叩き起こすんです。」

「叩き起こすのか…。」

レンらしい、と鶴丸は少し笑った。

レンは良くも悪くも人の都合などお構いなしだ。
それが小憎らしい時もあるが、終わってみれば大抵は”悪くない”と思える結果を齎す。

よし、と鶴丸は腹を括る。
確かに呼び起こさなければ、良いのか悪いのかなんて誰にも分からない。
もしも悪い結果だとしても、何とかなるだろう。
いや、何とかしてみせる。

会いたいと願ったのは誰でもない自分自身なのだから。

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