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君に届くまで

第58章 鶴丸の願い



それからも何日かかけ、大量の玉鋼を使い鍛刀するも、大した変化はなかった。

そもそも玉鋼が三日月に馴染まないのだ。
刀身をある程度造り、繋げようとして失敗。
折れた傷口からちまちまと玉鋼を埋めようとして失敗。
全く新しく造ろうとして、人違い。もとい、刀違い。これは早々に諦めた。

とにかく、打つ手がなかった。

「だぁぁぁ!無理!出来ない!」

レンは遂に根を上げた。










とた、とた、とた、と足音が近づいて来る。

部屋でうつらうつらと船を漕いでいた太鼓鐘は、ぼんやりと目を開けた。

「よ、貞坊。なんだ、寝ていたのか?おどかせばよかったな。」

鶴丸は、刀を腰から抜いて壁の刀置きに立て掛ける。

「はぁ…。今日は散々な目に遭った…。」

燭台切は収納棚から塗り薬を準備しつつ、刀を置き、早速着替えはじめた。

太鼓鐘はぐぅーっと体を伸ばすと、体をすっと起こした。

「おっかえり〜。遠征はどうだった?」

「万事終了!楽勝よ!」

「鶴さんは…。楽勝じゃなかったよ。小競り合いに巻き込まれて大変だったんだから。」

燭台切が話しはじめたところで、ドタドタと聞き慣れない足音が聞こえてきた。
部屋にいた面々は何事かと、障子から顔を出しす。
すると、むすっと不機嫌そうな顔のレンがずんずん歩いて来るところだった。

「レンじゃねぇか。足音立てるなんて珍しいな。」

太鼓鐘の指摘にレンは少し苛々しながら答える。

「ちょっと煮詰まっていまして。鶴丸さん、手伝ってください。」

「え?俺、遠征から帰って来たばか…」
「手伝ってください。」

レンは鶴丸の返答に被せるように再度言うと、有無を言わさず、彼の手を掴んで出て行く。

「え?おい…。」

太鼓鐘が止める間も無く2人はさっさと出て行った。

「なんだ?」

「さぁ…。もしかして三日月さん?」

太鼓鐘と燭台切は顔を見合わせた。

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