第58章 鶴丸の願い
それから数日間、仕事もそこそこに鍛刀部屋に籠るレンの姿がよく見られた。
近侍当番が日毎変わる度に、彼等はレンと鶴丸の事情を知っていく。
「レンちゃん、お昼持ってきたよ。」
燭台切がひょっこりと鍛刀部屋へ顔を出した。
今日の近侍は燭台切だ。
もうそんな時間か、とレンは顔を上げる。
「ありがとうございます。机に置いておいてもらえますか。
政府から何か要請が来てますか?」
「いや、今のところ来てないよ。それより大丈夫かい?」
「何がですか?」
「ここ最近、根を詰め過ぎじゃないかい?レンちゃん、夜もやっているだろう?」
よく見てるな、とレンは思う。
気になって眠れないことが度々あり、そういう時は大概ここに朝まで籠る。
「何もそこまで無理をしなくてもいいんじゃないのかい?」
燭台切は気遣わし気に言う。
レンは作業を一度止め、ふっと窓の外を見た。
今年もそろそろ秋が来る。