第58章 鶴丸の願い
「諦め切れないんだ…。どうしても…。」
安堵したように目を瞑り消えていく様は、今でも時々夢に見る。
「どうしても、もう一度会いたい。会って話がしたい。」
もっと他にやりようがなかっただろうか。
その夢を見る度に、そう思う。
思ってしまう。
巻き戻しをしたいのかもしれない、と鶴丸はよく思う。
叶わないと分かってはいるが。
視線を落とし苦しげに顔を硬らせる鶴丸を見る。
次いで、レンは手元の柄に視線を向けた。
「…鍛刀の作業になると思うんですが、やってみなければわかりません。」
鶴丸は徐にレンを見る。
レンも視線を戻した。
「…そしたら、三日月には前の記憶は無いのか?」
「たぶん新しい刀としてこの方は顕現すると思います。」
その前に修復が出来るのかどうかも怪しいが。
「…この三日月に顕現してほしいんだが。」
新しい刀では意味がない。
“彼に”会いたいのだ。
「…無茶言わないでください。」
レンもそれは理解できるが、出来ないことを出来るとは言えない。
「…無理を承知で頼む。」
鶴丸の頑なな様子に、レンは折れ小さく息を吐き出す。
「やるだけやってみますが、期待しないでくださいね。」
やれやれ、といった様子のレンに鶴丸は小さく笑った。
「あぁ。恩に着る。」