第58章 鶴丸の願い
鶴丸は、そっと懐に手を当てる。
そこには、お守りのように始終持ち歩いている三日月の柄が入っている。
鶴丸は迷った。
審神者として立ち始めたばかりのレンに修復を頼むのは酷だろうか、と。
けれど、この状態から治る見込みは限りなく薄い。
それに、いつ消えてしまうかも分からない…。
そう考えると、”今”が時期のような気がした。
鶴丸は徐に三日月の柄を取り出した。
「なぁ。一つ頼みを聞いてはくれないか?」
鶴丸は思い切って、そう切り出した。
レンは報告書を書いていた手を止めて鶴丸を見た。
「何でしょう?」
「これ、何とか直せないか?」
コトン、という音を立てて、鶴丸は机に柄を置いた。
「何ですか?これ。」
レンは不思議そうにそれを手に取った。
「それは柄、刀の持ち手の部分だ。」
「それって…。」
レンは少し顔を硬らせて鶴丸を見る。
「そいつは三日月宗近という。初代が顕現させた仲間だ。前の審神者のせいで禍ツ神となってしまったがな。」
鶴丸は苦く笑いながら柄を見つめる。
今でもはっきりと覚えている。
彼の言葉。
斬った感触。
最期の顔…。