第58章 鶴丸の願い
「まぁ、忍者だからね…。」
乱の呟きに、彼等は一斉にレンを見た。
「いつ現代に行ってたんだ?」
厚が不思議そうに問いかける。
退院してからというもの、レンが外出していることなんてほぼなかった。
昼に外に出ることはあっても、だいたいはすぐに帰ってくる。
ましてや夜になんて、一度もなかった。
レンもそれは思っていて、不思議そうにテレビを見た。
「ここ最近現代になんて行ってないですよ。最後に行ったのなんて、通院で行ったか、服買いに行ったかですし。その前は入院していて…、あ。」
そこまで記憶を辿って思い出した。
“レンは”出ていないが、”影分身は”外へ出ている。
暗がりで見えづらいが、映像の場所は、病院に併設されている森林公園ではないだろうか。
「レン、電話繋ぎっぱなしだよ。瀬戸さん、すっごい怒鳴ってるよ?」
加州の指摘に、レンはスマホの画面を見る。
「あ、忘れてた。もしもし。」
『聞いてなかったのかよ!!てめぇ!今度会った時締めてやるからな!!』
いたくご立腹の様子だ。
「すみませんでした。」
レンは即答する。
『まったくだ!!
で、何でまたこんな夜に飛び回ろうと思ったんだよ?』
「映像は、多分1年前の…入院中のものだと思います。単純に修行しようと影分身を出した時のじゃないかな、と。」
『お前は…。あれ程、人の目に留まるなと言っておいたのに…。まぁ、ニュースじゃないだけまだマシだがな。
気をつけろよ?どこに人の目があるか分からないんだからな。』
「了解です。」
レンがそう答えるや否や、電話の向こうから”代われ、代われ”と声が聞こえてくる。
次いで、何の前置きもなく、知らない声が話しかけて来た。