第58章 鶴丸の願い
プルルル、プルルル、プルルル…
「あれ、電話だ。」
加州が棚の上に置かれているスマホを手に取った。
「レン、瀬戸さんから電話だよ。」
はい、と言って、加州はレンに手渡した。
珍しい。
確かに瀬戸さんからだ。
レンは通話ボタンをタップし、
「もしも…」
『こんのバカ女が!!』
開口一番に怒鳴られ、思わず電話から耳を離す。
「…何ですか?藪から棒に。」
レンは瀬戸に問いかける。
『何でじゃねぇ!!何でテレビで取り沙汰される様な真似しやがった!!?』
そこへどたどたと、乱、五虎退、厚がレンの部屋に駆け込んで来た。
「レン!レンがテレビに出てるよ!」
「衝撃映像として出てるぞ!」
「ま、まだ個人まで特定されてないですが…。あの、あれは主様、ですよね…?」
何の話か分からないレン達3人は、顔を見合わせて部屋を出た。
階段を駆け降りて、すぐ近くの共同部屋に行くと、江雪、小夜が並んでテレビを見ていた。
「ねぇ…。これってあなたでしょう?」
「どう見ても貴女にしか見えません。」
小夜と江雪はテレビとレンを見比べる。
『前からCGじゃないって言ってたんですけど中々信じてもらえなくて。こうして調べてもらって本物だって証明できたんで嬉しいです。』
映像の持ち主らしき男が嬉しそうに語る。
『問題の映像をもう一度見てみましょうか。』
改めてその映像が流された。
レンと酷似している2つの影が公園の木々や遊歩道を縦横無尽に飛び回り、戦っている様な映像だった。
そう長くはない映像で、暗がりのせいで顔もはっきりとは映っていない。
『改めて見ると、俄には信じられない様な人間離れした動きですね。』
『凄いですよね。まるで忍者みたいな。』
映像を見ていた芸能人達は笑いながら談笑し始める。