第58章 鶴丸の願い
「なぁ、レン。キミは何で魂縛りの呪が効かないんだ?」
鶴丸は、何気なくレンに尋ねる。
「あぁ、それは…」
「たっだいま〜。」
レンが答えようと口を開いた時に、出陣していた加州が戻ってきた。
彼は、本日第一部隊の隊長を務めている。
「おかえりなさい。どうでした?」
「任務完了!恙無くバッサリ斬って来たよ。」
レンの問いに、加州は晴れやかな笑顔で物騒な報告をする。
「…俺が言うのもなんだが、もうちょっと言い方がないか?」
鶴丸は呆れ半分で苦言を呈す。
「いいじゃん?要は内容が分かればいいんだし。ねぇ?レン。」
「そうですね。報告に必要な事柄が分かれば問題ありません。
負傷者はいませんか?」
鶴丸はため息ひとつつき、やれやれと首を振る。
「み〜んな無事。擦り傷一つないよ。」
加州はにっこり笑って答えた。
「結果は上々ですね。では、その様に報告しておきます。お疲れ様でした。」
レンは、早速出陣の内容報告書の作成にかかる。
「そういえば、さっき何か話そうとしてなかった?」
加州は先程の話を戻し、レンに尋ねる。
「…あぁ。魂縛りの呪が効かないのは何故か、でしたっけ?」
レンが話を思い出し鶴丸を見ると、彼は身を乗り出してレンに再び尋ねる。
「そうそう。少し気になってたんだ。」
「そういえばそうだね。俺も不思議だった。何で?」
加州も首を傾げる。
「簡単な話ですよ。”レン”が本名じゃないからです。」
しれっと重大発言をするレンに2人は固まる。
暫し沈黙が流れ、レンは不思議そうに首を傾げた。
「…あれ?」
「「あれ?じゃない!!どういうことだ!!」」
「どういうことって、そういうことです。」
レンにしたら、それ以上に説明のしようがない。
2人はそれを見て頭を抱えてしまう。