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君に届くまで

第58章 鶴丸の願い



ここは、修繕が終わって間もないレンの本丸だ。
先日漸く引っ越しが終わり、再稼働となった。

本丸に帰って来ても暫くは審神者見習いの扱いの為、報告の類いは全て七海を通す。
最初の頃こそ、刀剣達には若干の戸惑いや抵抗はあったが、気に留めないレンを見ているうちに、皆、気にしなくなっていった。

レンは自身の本丸に戻ってからも、教わった通りに業務をこなし、報告をし、本丸を運営する。
今でこそ、ある程度スムーズに運営出来ているが、教わった当初は何もかもが初めてのことで上手くいかず、しばしば投げ出すこともあった。

刀剣達は、レンが仕事をしている姿を見る度に思い出す。
長谷部からよく逃げ回っていたな、と。

「それを思えば、今や立派に板について…。」

鶴丸は、七海の本丸での日々を思い返しながらレンを見る。

「…何の話です?」

レンは怪訝な顔をして鶴丸を見返した。

「いやぁ…。長谷部から逃げ回っていたキミを思い出してな。」

鶴丸は頬を掻きながら困ったように笑った。
レンは合点がいき、あぁ…、と少し苦い顔をした。

「逃げたくもなりますよ。
毎日、書類、書類の羅列で。しかも、審査の厳しいこと、厳しいこと。長谷部さんは細かすぎるんです。」

レンは、顰めっ面で指南役だった長谷部の文句を言う。

「長谷部も細かいが、キミが大雑把すぎるんじゃないか?」

鶴丸は話半分を聞きながら、的確な突っ込みを入れる。

「あんなん、事細かにやってたら日が暮れます。」

鶴丸の言にもどこ吹く風で、レンは開き直る。

「終いには、怒った長谷部が魂縛りの呪まで使ってたな。」

「効きませんけどね。」

楽しそうに笑う鶴丸に、レンは即答した。
それを聞いて、ふと思い出す。

ーそういえば、俺も前にやったが効かなかったな…。
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