第57章 宴
「レン〜!」
声の方を見ると、遠くの方の廊下に鶴丸が走っているのが見えた。
「あれ?鶴丸?」
「何だろう?慌ててるね。」
加州、大和守、レンは顔を見合わせた。
レンは声に応えるように、すたっと廊下に飛び乗った。
鶴丸はレンの姿を捉えると、全速力で駆けて来る。
「レン!!自分を疫病神だと思ってるってどういうことだ!!」
鶴丸は息を切らしながらレンに詰め寄る。
「…情報がお早いですね。聞いた通りですよ。私は…」
「キミは疫病神なんかじゃない!!だから疫病神なんて思うんじゃない!誰にも疫病神なんて言わせるものか!!」
「いや、あの…」
「手始めにそこの鯰尾を締め上げてやる。我らが主を悪く言わせてなるものか!!」
言うが早いか、鶴丸は東家の中から呆然とレン達の様子を見ていた鯰尾を振り返り、飛びかかる。
鯰尾は、初動が遅れて逃げ出すのが一歩遅かった。
「ぐぇ…!」
鯰尾は蛙がひしゃげたような声を出しながら、バタン!と床にうつ伏せで押し倒された。
背に乗りかかる鶴丸はさぞ重いことだろう。まるで、大人が子供を虐めているような図になっている。
「主の恨み!思い知れ!」
「いや、恨んでませんて…。」
プロレス宜しく腕で首元を締め上げる鶴丸に、レンは呆れたように突っ込みを入れる。
「鶴丸、相当頭に血が昇ってるね。」
「おかけで怒りが冷めちゃった。」
加州と大和守はやれやれと言った風に様子を見るだけで、止めに入るつもりはないようだ。
「ぐ、ぐる゛じい゛ぃぃ…。」
鯰尾は床をバシバシ叩いて、降参の意を示した。
それを見て、一護一振は慌てて廊下に上がり、鶴丸を止めに入る。
「つ、鶴丸殿!その辺で許してくだされ!弟が、鯰尾が折れてしまいます!」
一護一振は顔を青くして鶴丸の体を揺する。
だが、そんなことで止まる鶴丸ではない。
鶴丸を止められないと見るや、今度はレンに取り縋る。