第57章 宴
「…取り敢えず、中に入りませんか?」
痺れを切らして、レンは東家の中へと招いた。
鯰尾は、はい、と小さく返事をすると素直に中へと入り、少し離れた場所に腰掛けた。
「…いつからここにいたんですか?」
レンは、気まずい空気を何とかしようと質問を繰り出す。
すると、漸く鯰尾の口が開いた。
「ほぼ最初から…、ですね。…すみません、聞く気はなかったのですが…。」
鯰尾は、申し訳なさそうに視線を落とす。
「そうですか。まぁ、聞かれても致命的になるようなものではありませんので、大丈夫です。」
レンは気にすることもなく、淡々と答える。
「そう、ですか…。」
聞き様によっては冷たく聞こえるレンの言葉に、鯰尾は言葉が続かない。
それきり、また沈黙が訪れる。
何がしたいんだ、とレンは益々焦ったく思っていると、
ジャリ…
微かに砂のような石のような物が擦れる音を拾う。
レンは鯰尾をちらりと見るが、彼は気が付いていないようだ。
周りを見渡しても人は見当たらない。
だが、希薄ではあるが気配は感じる。
レンは薄ら警戒しながら立ち上がった。
「どうしたんですか?」
鯰尾の問いにレンは答えることなく、東家から廊下に出るとピタリと止まる。
次いでじーっと足元を見た。