第57章 宴
暫く、3人の間に沈黙が流れた。
「なぁ、レン。」
薬研は静かに切り出した。
「俺は…、俺達は人間にはいい感情を持っていない。
けど、あんたは別だ。
…けど、それはレンが主だからってだけが理由じゃない。」
乱もそれに頷く。
「そうだね。ボクもレンを気に入ってる。
勿論、ボク達は主の神気に惹かれる、っていう特性は否定できないけど。
だけど、それだけが理由じゃない。」
「…レンは俺達の為に、俺達を助ける為に主になってくれた。俺達を物としてじゃなく”人”として見てくれた。想ってくれた。
人間にとったら、それは取るに足らないことなんだろうけど、俺達にしたら、それは凄く…、凄く尊いことなんだ。」
薬研は穏やかに微笑みながら遠くを眺める。
「いつか、言ったよね。ボク達は何度でも顕現するって。けど、レンは”そいつはもう、同じ顔の別の奴だ”って言ったの、覚えてる?」
乱は少し涙を含んだ声で尋ねた。
勿論、レンも覚えている。
本丸に突如現れた時間遡行軍の大群から、薬研達を守り切った後にその話になった。