第57章 宴
「…里抜けした後、一族の里を探し当てて…。暫く住み着きました。」
「氷を使う一族?」
「はい。…そこで一族のことが書かれていた手記を見つけて…。自分の故郷がここだと確信して…。」
レンは手記を思い出す。
最後の一文。
“我らの希望を絶やさぬ為、我らの全てを持って守り抜く。”
「…たぶん、私のせいで一族は滅んだんだと、知りました…。」
2人は息を呑んだ。
「けど、証拠は…ないんでしょう?」
「はっきりと、レンのせいだと、書いてあったのか?」
2人の問いかけにレンはゆっくり首を振った。
「確証となるようなものはありませんでした。」
「なら…。」
「一族は、近年力が弱まっていて衰退していたそうです。けど1人強い力を持った子が生まれたとありました。その子を守る為に一族は滅んだ。
手記にあったその子は生きていれば私と同じくらいです。」
2人は言葉が出なかった。
「私は、自分を疫病神だと思いました。」
そう思っていた筈だった。
「けど、いつの間にか、そのことをすっかり忘れていました。
鯰尾さんに言われて、それをよく思い出した。
…今更ながら、あなた方の主となったことを後悔しました。
私は、人と関わりを持つべきではないんです。」
そう思ったら、あんなに美味しかったご馳走が何だか味気なく感じてしまった。
沢山の人に囲まれた今が、とても居心地が悪くなってしまった。
「私は、きっとここでも疫病神になり得る。遅かれ早かれあなた方を不幸に巻き込むと思います。」
レンはぼそりと呟くように言った。