第57章 宴
流れていく雲を見ながらレンは考えを纏めていく。
「…疫病神、って…私にとって、あまりいい思い出なくて…。」
「…まぁ、疫病神って言葉自体にいい意味はないしな…。」
薬研も背もたれに身を預け、東家から見える遠くの景色を眺める。
「リヨクが死んだ後、暗部に配属になって…。班で任務を色々やってきたんですけど、どうしても敵に止めを刺せなくて…。何度か任務失敗を招いたんです…。」
「…そう…。」
レンでもそういうことあるんだ、と乱は思う。
「繰り返してる内に、疫病神って…呼ばれるようになりました…。」
薬研は驚いてレンを見る。
傷ついているだろうに、レンは表情一つ変えないでいる。
「自分でもそれがピッタリだな、って思います…。」
その言葉に2人は目を瞠る。
「違うぞ!それは違う!少なくとも俺にとってレンは違う!」
「ボクだって!レンは疫病神なんかじゃない!」
2人はレン自身がそう思っていることに胸を痛めて、思い思いに否定するが、レンはやはり表情一つ変えない。
「…私は、リヨクと殺し合いをしました。それは強い忍を作る為です。
…リヨクもそれを承知で私に命を譲りました。
当然そこには期待が含まれていたと思います。」
レンはリヨクの最期を思い出す。
“生きろ”という言葉はとても重たく感じる。
「けど、私は役立たずな上に里抜けまでした。…リヨクの期待には応えられなかった。」
「…だから、疫病神だと?」
乱は悲し気に問う。
「ピッタリじゃないですか?」
レンは何の感情も含まず、淡々と述べる。
それがかえって痛々しい。
2人は憮然として首を振る。
「全くピッタリじゃない。」
「理由にならない。」
レンはそれを聞きながら、少し可笑しそうに微笑んだ。