第57章 宴
レンの脳裏に過去の出来事が掘り起こされる。
リヨクが死んだ時。
暗部に配属されてから、数々の任務失敗をもたらした。
それと言うのもリヨクの死後、血を見れなくなってしまったからだ。
どうしても敵の急所を避けてしまい、止めをさせない。
模擬戦ではそれなりの成績を挙げているのに、実戦ではまるで役に立たなかった。
いつしか付いた渾名が”疫病神”だった。
『お前はもう暗部にはいらない。情報収集部隊に回り、根を支えろ。
…ダンゾウ様をこれ以上失望させるなよ。』
とうとう戦力外を言い渡された時は、言い知れぬ絶望感が胸を占めた。
遊女として妓楼に入った時には、もう何の希望も見出せなかった。
体を穢され、貪られる毎日に、生きる価値すら自身に問うたことさえあった。
その度に笑いが込み上げた。
忍ですらない今の私の為にリヨクは死なねばならなかったとするならば、私はリヨクにとって正しく疫病神だ、と。
これが本当に生きることになっているのだろうかと考えなかった日は無かった。
ある冬の日、私はひらりひらりと舞う雪を追いかけるように妓楼を抜け出していた。はた、と気がつくと、妓楼からは遠く離れていた。衝動的なことだった。
けれど、もう一度戻ろうとは思わなかった。
そこから着の身着のまま放浪の旅へと出る。
追われる身となった私は、他に行く当てもなく、氷室の里を探すことにした。
他里にあるという情報を掴み訪ねてみたが、そこは既に廃墟と成り果てていた。
別段、期待はしてはいなかったが、骨組みすら残らぬほどの荒廃を目にした時は、少なからず落胆したものだ。
私は方々を歩き回り、幾つか氷室一族に関する資料を見つけた。