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君に届くまで

第13章 薬研藤四郎の手入れ



「燭台切!」

挨拶もなく、レンは勢いよく障子を開け放つ。
そこには燭台切の姿はなく、

「なんだ、なんだ?光坊なら留守だぜ。」

鶴丸しかいなかった。

彼は少し驚いた。この子でも焦ることがあるのかと。

「燭台切を知りませんか…?」

「燭台切、ねぇ…。」

いつの間にやら、呼び捨てで呼ぶ程仲良くなったのか。
面白くない。

本当は行き先を知っている。たぶん畑か食糧庫にいるだろう。しかし素直に人間に教えてやるのは癪に触る。

「わからないな。散策でもしてるんじゃないか?」

「そうですか。」

レンは鶴丸の返事を聞くと、鳴狐と五虎退に振り返る。

「2人は先に部屋に戻ってください。私が探しに行きます。」

「でもみんなで探した方が早いです!」

「そうですよ!わたくし達も探します!」

「まさか。私も1人で探すつもりはありませんよ。こうするんです。」

そう言うと胸元で十字の印を組み、チャクラを薄く細かく練る。

「影分身の術。」

レンが唱えると同時に20体弱の影分身が出てきた。

「ええぇぇぇええ!!!」

「や、今はそういうの、いいんで。」

レン達は一斉にお付きの鳴狐に突っ込んだ。

「……。」

合唱の様に一斉に言われると凄い迫力である。

「とにかく、2人は部屋で待機です。
私が探してきますから。」

そのうちの1人が五虎退と鳴狐に指示を出す。
そしてサッとその場から瞬時にいなくなった。

「行きましょう。」

鳴狐は五虎退を促して走って行ってしまった。
後に残された鶴丸はぽかんとする。空いた口が塞がらない。

「…びっくりした。」

次いでゆるゆる笑いが込み上げる。
どう出るか、と期待してたら、期待以上の驚きが返ってきたのだ。
あの子といると、きっと退屈しないんだろうな、と思う。
でも信じることは出来ない。一緒に居たくない。とんでもないジレンマだ。

「あの子がもっと早くに来てくれていればな。」

鶴丸は天井を見上げ、1人呟いた。

今までのことがふと過ぎる。

あまりにも酷い時が長すぎた。
凄惨なものを見過ぎた。
人間は駄目だと悟ってしまった。

簡単には覆せない。

「はぁ…。儘ならないな。」

鶴丸はごろんとそのまま寝転んだ。
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