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君に届くまで

第57章 宴



「どうもこうも…。どこかで会ったことがある気がするんだとさ。運命を感じてたりしてな。」

薬研が揶揄い混じりに説明すると、加州は微妙な表情を浮かべてレンを見遣った。

「いや、ないわ…。レンが”運命”とか。そんなタマじゃないじゃん。」

「ははは!確かにな!」

言われたい放題な本人は、既に周りの声は耳に入っていない。

「私は、レンさんとは初対面だと思うのですが…。」

様子を見ていた一期一振は、困ったように笑いながら言う。

「ボクもそう思う。うちには一兄は顕現していないし、ここに来てから初めて一兄を見た筈なんだよね。」

言いながら、乱はレンを見る。

「案外、本当に一兄が気に入ったんだったりして。」

にしし、と笑いながら信濃が揶揄う。

「まぁ、一兄ほど面倒見が良くて優しい男は、そうそういないからね。」

信濃の隣にいた包丁が鼻高々に言う。その彼の周りには、プリンやゼリーやケーキやらが、所狭しと並べられている。
信濃は、それを何とも言えない顔で見ながら、そうだね、と答えた。

「一回お見合いでもしてみたらどうですか?」

「人間じゃあるまいし…。」

「俺達、顕現したんだから人間みたいなもんじゃないか?」

今剣、秋田、厚が口を挟み、更に話が大きくなる。

「その辺にしておきなさい。」

一期一振がやんわりと止めに入るが、話は止まる気配はない。
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