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君に届くまで

第57章 宴






「「「かんぱ〜い!!!」」」



レンは、ぐいっとお猪口を煽って一息ついた。
日本酒独特のいい香りが鼻腔を突き抜ける。

規則正しい生活は、胃には優しいが刺激がない。

長かった1ヶ月半。

「人生で一番退屈だった。」

レンは、ふと思い出してぽつりと呟いた。

「大袈裟だと思うな、ボク。」

乱は呆れた目で一瞥してから、レンと自分の受け皿に栗ご飯のおにぎりと唐揚げや串焼き、煮付けをよそる。

「はい、レン。よく我慢しました!退院おめでとう!」

「ありがとうございます。」

レンは、まず手始めに栗ご飯のおにぎりに齧り付いた。
ほんのり塩味の利いたごはんに、ほくほくの甘い栗がよく合っている。
季節柄、今が旬なのだろう。
たぶん、少しもち米が混ぜてある。もちっとした食感がまた堪らなく美味しい。
唐揚げも串焼きも肉に味が染みていて、中はふんわり柔らか、外はカリカリのザクザクだ。味も歯応えも申し分ない程美味しい。

「…幸せそうだね。」

乱がくすりと笑いながらレンに話しかける。

「はい。何せご馳走ですから。」

レンは乱をちらりと見ては、また夢中でご馳走を平らげる。

「凄い食欲ですな…。」

「そうだね…。」

レンの目の前に座った一期一振と信濃は、箸を止めて唖然と見る。
女性はもっと、七海のように淑やかでゆっくり少量を食すものだと思っていただけに、全てが真反対のレンには驚かされた。

「お腹が空いている時はもっと凄いよ。」

乱は正面の二人を見て、可笑しそうに笑った。

「女のカケラもないだろう?偶に言い聞かせてはいるんだがな。」

薬研は苦笑する。

「女の子は女の子らしく、が苦手なんだってさ。」

「…ほっといてください。」

加州はいつもの事、といった風に気に留めずに補足するのを、これまた右から左に流しながらレンは反論する。
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