• テキストサイズ

君に届くまで

第57章 宴


けれど、長谷部だって重症とまではいかなくても、それなりに怪我を負っていた。
仕方がないことだと思う。
そこまで考えが至って、あぁ、と長谷部が言ったことを理解した。

俺は俯いた。
確かに俺達が着いた時には、レンさんが鴉と対峙していた。
それは、七海さんと長谷部を守る為だったのかな、と思った。

「あの時、実は危なかったんだ。
鯰尾達がこちらに着く直前に、レンさんは鴉に蹴り飛ばされて、殆ど身動きが取れなくなっていたんだ。
それでもあの人は、命懸けで俺や七海様から鴉を遠ざけた。
あんな豪気な人は初めて見るよ。」

「…それで、今回入院となったんですな。」

近くから一兄の声がして、長谷部は一兄の言葉に頷いた。

「だから俺は、”人”としてその恩に報いたいと思っている。」

“人”として。

顕現している俺達にとっては、甘美な響きだと思う。

ふと、空気が和らいだ。
たぶん、みんなの疑念や懸念が晴れたんだ…。

俺は納得がいかない、もやもやした気持ちを一人抱えることになった。
/ 1263ページ  
スマホ、携帯も対応しています
当サイトの夢小説は、お手元のスマートフォンや携帯電話でも読むことが可能です。
アドレスはそのまま

http://dream-novel.jp

スマホ、携帯も対応しています!QRコード

©dream-novel.jp