第57章 宴
「レンをここに置くべきではないんじゃないか?」
七海さんが連れ去られて、弱り果てて戻って来た日に、鶯丸がぽつりと漏らした。
誰も否定しなかった。
つまり、それはみんな心の中で密かに思っていた、ということだ。
正直、ほっとした。
俺だけが思っていたわけじゃなかったから。
少しだけ、せいせいした気分だった。
これで、レンさんが出て行く流れになれば…。
けれど。
「…俺はそうは思わない。
レンさんをここに置くと決めたのは紛れもなく七海様だ。
あの方は全て覚悟の上でレンさんを招いた。それは誰も否定出来ない。いや、否定する事は主命に反くも同意。俺達刀剣がすべきではない。」
長谷部は毅然と言い放った。
それを聞いて、俺は重苦しい気持ちになった。
周りを見回すと、みんな苦悶の表情を浮かべている。
納得が出来ないのだろう。
俺も納得出来ない。
「…とまぁ。それはそれとして。」
再び長谷部を見ると、彼は少し苦笑していた。
「俺の個人的な意見としては、もう少しだけ助けてもいいかな、とは思う。
レンさんは…あの人は、俺達を”人”として見ている様な気がする。
あの人にとって、俺達は漏れなく守る対象で、七海様の家族と思っている節があるんだ。」
「…だからって…。」
俺は黙っていられず呟いた。
「鯰尾も見ただろう?鴉があの人と戦っていたところを。本当は俺が鴉に向かうべきだったんだ。」
長谷部は自嘲気味に俯いた。