第57章 宴
俺は、鯰尾藤四郎。
この本丸で一位二位を争う実力を持つと自負している。
刀剣は数多くいるが、俺と兄弟…骨喰藤四郎は、七海さんが気に入っているのか、よく戦場に出してもらっている。
お陰で経験を積む事には事欠かない。
つまり、何が言いたいのかと言うと。
何があっても、この本丸を、七海さんを絶対に守れる自信があった、ということだ。
けれど…。
レンさんが来て、いざその時が来てみたら。
殆ど何も出来ず終いだった。
七海さんが拘束された時、一番に駆けつけたのはレンさんで。
俺が駆けつけた時は、奴らが逃げ去るところだった。
人間には負けない絶対の自信があっただけに悔しかった。
後でその時の映像を見た時は、苛立ちを覚える程鮮やかに場を収めていたっけ。
ただ、そのせいで七海さんが政府に連行されたのも事実だ。
人間はみんな、七海さんみたいな戦闘に向かない人だと思っていた。
仮に訓練したとしても、たかが知れると侮っていた。
初めてだった。
他者を疎ましく思ったのは。
七海さんが連れ去られた時、彼女が身を挺してまでレンさんを庇ったのにも納得がいかなかった。
拘束されていいのは七海さんじゃない。
政府はレンさんに手が出せないから七海さんを狙ったんだろう。
そう思うと、悲しくて、悔しくて、憤ろしかった。
レンさんさえここに来なければ…。
そう思ったのは俺だけじゃなかった。