第57章 宴
「全く見分けがつきません…。」
同じ黒のジャージに、同じ顔、同じ雰囲気。
入れ替わっても、黙っていればそう簡単には気付けないだろうな、とレンは思ってしまう。
「まるで双子です。」
レンは微妙な顔で2人を見上げ、それを見た二人の燭台切は楽し気にくすくすと笑った。
「見分けが付かなくても大丈夫だよ。僕達が弁えるから。
さ、それより席に着いて。約束通りご馳走作ったよ。」
そう言われて、レンは再び広間を振り返る。
机には、パエリア、クリームパスタ、薄口の煮物、唐揚げ、焼き鳥っぼい串焼き、シーフードサラダ、苺のタルト、ショートケーキ、シフォンケーキ、グラスゼリー等々…。他にも見たこともないような料理がずらりと並ぶ。
料理に統一性は無いものの、どれも美味しそうだ。
「本当にご馳走ですね。大変だったでしょうに。」
「まぁね。だから、七海さんとこの僕と歌仙君に手伝ってもらったんだ。」
「僕も腕によりをかけて作ったからね。絶対気に入るよ。」
声の主を振り返ると、歌仙がデザートの皿を運んできたところだった。
「ちと張り切りすぎじゃないですか?」
レンは少し困ったように燭台切を見上げるが、
「主の快気祝いだもの。そりゃあ僕だって張り切るよ。」
そう言って、燭台切はレンの頭を撫でた。
「おかえり、レン。」
燭台切は心底嬉しそうに笑う。
それを見て、レンも僅かに微笑んだ。
「ただいま、です。」
「よ〜し!食べるぞ〜!!」
鶴丸の一声で、がやがやと皆席に着きはじめる。
「じゃ、レンさんの快気祝いに!」
「あと、七海さんよろしくお願いします!ってことで!」
「「「「かんぱ〜い!!!」」」
彼等は一斉に盃を掲げた。