第57章 宴
「いいお付き合いが出来そうですね。」
レンは、横目で見ながら帰り支度をはじめる。
1ヶ月半の生活な筈だったのだが、あれよあれよと荷物が増えた。タオルや食器、着替え、洗面用具などなど…。袋が幾つあっても足りない。
レンは袋詰めをはじめて数分で、早くも整理が出来なくなり手を止めた。それを見て薬研は苦笑する。
「明日も誰か来るだろうから持ってもらうといいさ。」
「…そうします。明日来る人に袋を大量に持って来てくださいって伝えてください。」
レンはパタリと棚を閉じると、袋詰めした物を端に寄せる。
「さて、俺達は帰るよ。あんまり長居しちゃ悪いしね。」
佐々木はそう言って立ち上がった。
レンはそれを見て、彼を呼び止める。
「新田さんへの口添え、ありがとうございました。」
「いや、お役に立ててよかったよ。またお店にも顔出してね。」
「はい。落ち着いたら、是非。
新田さんもありがとうございました。お陰で助かりました。」
レンは新田にも頭を下げる。
「ま、お互い様ってやつだな。退院おめでとさん。」
新田は、レンにそう返してポンポンと肩を叩くと、佐々木と一緒に部屋を後にした。
「じゃ、俺も帰るわ。仕事が山積みだからな。」
瀬戸も時計やスマホをチェックして慌ただしく出て行った。
「瀬戸さん!」
レンは慌てて呼び止める。
「何だ?」
「お世話になりました。」
レンが頭を下げると、ふっと穏やかに笑った。
「いいってことよ。また顔出せよ。」
瀬戸は後ろ手に手を振り、去って行った。