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君に届くまで

第57章 宴




「だろ!?俺が正しいだろ!?」

退院の説明を一通り受けた後、瀬戸は先程のことを掻い摘んで話して聞かせた。

「まぁ、俺もキミの意見には賛同する。だが、考えてもみろ。レンに人の常識が当て嵌まると思うか?」

「ま、レンだからな。怒っても疲れるだけだぞ。なぁ?たぁ〜いしょ。」

鶴丸は朗らかに瀬戸に言い、薬研は揶揄いを含んだ笑みを浮かべてレンを見る。
だが、

「そうそう。怒るのは疲れるだけですよ?」

「お前が言うな!」

レンは落ち込むどころか薬研に便乗し、瀬戸は益々怒りを募らせる。
瀬戸の剣幕に、佐々木と新田は苦笑するしかない。

「まぁまぁ。そういう意味で言えば、明日退院でよかったんじゃないか?少なくても心配事は減るぞ?」

「そうだけど!反省のはの字もないのは許せん!」

見かねて薬研が宥めるも、瀬戸の怒りは収まらない。

「ところで、お2人はどうしてこちらに?」

「聞けよ。」

レンは最早興味が失せたように瀬戸に背を向け、話題を変える。
瀬戸は阿呆らしくなり、レンのベッドにごろんと寝転んだ。

「俺はお前さんにお礼を言っとこうと思ってな。」

「俺は新田の付き添い。プラスお得意さんの主さんだから。」

新田と佐々木は笑って答える。

「お礼、ですか?女優の変化の?」

レンは首を傾げる。

「違うわ。いや、あれはあれで見ものだったけども。
瀬戸さんへの口添えだよ。
いやー、あれは助かりましたよ。危うく首が飛ぶところでした。」

そう言って、瀬戸に向き直ると頭を下げた。

「なんのなんの。こちらも重要な切り札を頂きましたから。お安い御用です。」

瀬戸も向き直って頭を下げる。

「また、機会があればお力をお貸しくださると幸いです。…なんてね。」

瀬戸は冗談めかして言うと、にかりと笑う。

「危ない橋に命綱があれば。喜んでご協力しますよ。」

新田もにかりと笑う。
転んでもタダでは起きないようだ。
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