第12章 散策
ふと、外に人の気配がする。
レンは玄関から外に出ると、いつかの赤目の青年が立っていた。
名前は確か、加州、だったような…。
「あんた、何してるの?こんなとこで。」
青年は無表情のまま淡々とレンに問いかける。
心なしか薄ら邪気を感じる…。
「何も…。散策をしていたら気になる建物があったので、中に入ってみました。」
「ふーん。なんか気になる物でもあった?」
「特には無いですね。汚くて生臭いです。」
レンは誤魔化すことなく、見たままをそのまま言うと、加州は皮肉気に笑って答える。
「それはそうだろうね。だって前の審神者、ここで死んだんだもん。禍ツ神に嬲り殺されて。」
「へぇ…。」
ここがそうなのか、と今し方入っていた棟を見上げる。
「…驚かないんだね。怖くないの?」
「まあ、割と慣れてますから。」
何にとは敢えて言わなかった。
職業柄、人の死には慣れている。
「あんたもその内、嬲り殺されるかもね。俺達、禍ツ神に。」
じゃあね、と後ろ手に手を振り、加州は去って行った。