第12章 散策
資材集めは、順調だった。
五虎退と鳴狐の体調を考えて3回に1回は休憩を挟み、十分に体力を回復させて周回することで、勝率を確保する。
休憩時間は1時間を要し、レンはその間暇になる。
そこでレンは、気の向くまま敷地内を散策してみることにした。
五虎退はお供をしたいみたいだったが、丁重に断った。
今日もぶらぶらと気ままに散策をする。
散策の成果か、何となくだがレンの中で敷地内の地図が思い浮かべられるようになってきた。
鳥居から反対側へ、塀に沿う様に渡り廊下を進んで行くと、他の建物と少し作りが違う棟を見つける。
「あれ、なんか違う…?」
レンはその建物に入ってみることにした。
渡り廊下を伝ってその棟に行くと、続きの渡り廊下が無いことに気がつく。どうやらこの棟は独立しているようだ。
玄関らしき所を見つけ、中に入ってみると薄暗く、ぼんやりと邪気が漂っている。
手近な部屋の襖を開いてみると、足の踏み場もない程、物が散乱している。ゴミも日用品も一緒くただ。
しかも何となく生臭い。まさに、
「きったね。」
の一言に尽きる。
そのまま部屋に入る気になれずにパタリと襖を閉めた。
遠目で見た時には2階があるように見えたのだが、階段は無いのだろうか。
パタリ、パタリと開けられるドアや襖を開けて確かめていくと、一つだけ、鍵がかかっている開戸を見つける。
ガチャガチャと木の取手を揺すってみるも開く気配はない。
鍵穴らしき物が見当たらないから、開くはずなのだが…。
レンはクナイを取り出し、開戸の隙間に差し入れてこじ開ける。ガコン、という音とともにゆっくりと開いた。やはり階段になっていた。
登って上まで行ってみると、屋根裏部屋のような造りになっていて、物で溢れていた。
そして誰もいないのに薄らと人の気配がする。
レンは不気味すぎてそれ以上留まる気になれず、さっさと降りていった。