第57章 宴
――翌朝――
瀬戸が予定より早くナースステーションに着くと、廊下の向こう側に見知った後ろ姿が見えた。黒髪で、背の中位まである三つ編みが歩く度に僅かに揺れている。
彼女はきょろきょろと辺りを見回しながらずんずん進んでいく。
「あれって…。」
瀬戸は不審に思い、彼女の後を追う。
見失わない程度に距離を置き観察すると、彼女は同じ階の別のフロアをあっちふらふら、こっちふらふらと、物色している様だった。
「何してんだ、あいつ…。」
瀬戸は声をかけようと踏み出した時に、電話が鳴った。
レンからだった。
「…え…?」
ーなら、目の前の彼女は一体…。
瀬戸はバッと顔を上げると、少し前を歩いていた筈の彼女の姿はなくなっていた。
瀬戸は首を傾げながら電話に出る。
「もしもし?」
『瀬戸さん、今どこですか?もうすぐ担当の先生が来るそうですよ。』
声もレンだ。
「あぁ…。今院内だからすぐ行くわ。」
瀬戸は首を捻りながらも了承する。
『わかりました。』
そう言って、電話は切られた。
ーどうなってるんだ?