第57章 宴
「それよりも奥脇はどうなったんですか?」
レンは林檎を食べ終わり、食器を片付ける。
「奥脇は統括の職を罷免されたわよ。だから、うちのエリアの統括は空席になっていてね、他エリアの統括が兼任することになったの。」
七海はどこかせいせいした様子だ。
「ちなみに一課に逮捕されたぞ。旨味はぜ〜んぶ持って行きやがったがな。」
瀬戸は憮然としながら言い放つ。
元々噂はあったものの、なかなかしっぽを掴めず、手を出せないでいた案件だった。
それを、地道な聞き込みやら情報入手やら、苦労して証拠を集めたのだ。
勿論、それにはレンの協力や馴染みのハッカーの貢献は大きかったが…。
だが、結局手柄は全て他人のもの。
せめて、ここまで積み上げた苦労は報われてほしかったと、瀬戸は一人ごちた。
「なら、これにて一件落着ですか?」
「お前は悔しくないのか!?俺等の頑張りは無かったことになってんだぞ!?」
瀬戸は泣き喚く勢いでレンに言い募るも、暖簾に腕押しだ。
「結果良ければ文句なしです。
それより、うちの本丸ってずっとあのままなんですかね?せめて台所くらい作ってほしいんですけど。」
瀬戸はがっくりと項垂れる。
「…それを言うなら終わり良ければ全て良し、でしょ。
あなた達の本丸は、台所だけでなく全部の再建が決まったわ。そして、暫くの間は私が管轄することになったの。」
「え、それどういうこと?」
「レンはどうなるの?」
大和守と加州は不安気に問いかける。
「言ったでしょ?レンさんは”審神者見習い”だと。
建築中は勿論うちにいればいいわ。けど、その後も暫くは私がレンさんを監督する形になるわね。」
大和守と加州は、ほっとして互いの顔を見て微笑んだ。
「じゃあ、レンは俺達といられる?」
「えぇ。離れることはないわ。」
大和守の問いに七海は、少し笑いながら答えてレンを見る。
「そういうことだから。レンさんには覚えてもらわなければならないことが色々とあるの。本丸が直るまでの間に急いで詰め込むわよ。
今のうちだけよ?のんびり休んでいられるのは。」
「…はあ…。」
レンは審神者のやることなんて然程ないだろうと思いつつも取り敢えず了承した。