第57章 宴
「っていうか、何で清光は知ってたのさ?」
大和守が口を尖らせて、加州に問いかける。
「俺も知ってた訳じゃないけどね。」
加州は肩を竦める。
「前にレンが鶴丸と喧嘩した時にさ、仕返ししないのか、って聞いたの覚えてる?」
「あぁ、うん。」
加州の問いかけに大和守は答えた。
あの時は、本丸が焼き討ちにあったばかりで、鶴丸はレンを政府の手先だと思っていた。だが、レンは鶴丸からの敵意を意に介さず流していた。
その時に、聞いたのだ。
「めんどくさい、って言ってたね。関わりたくないって。」
大和守は思い出しながら少し笑う。
「レンは面倒事が嫌いなんだと思う。そのめんどくさがり屋が、江藤の為に態々時間のかかる復讐をするかな、ってちょっと半信半疑だったんだ。」
加州はそう言って困ったように笑った。
「成程ねぇ。確かにレンがやるならもっと狡猾で効果的な方法を取りそうだよね。復讐するにしても、後々いかに関わらないで済むか、を考えそうな気がする。」
大和守も可笑しそうに笑う。
レンは林檎を食べながら微妙な顔で2人を見遣った。
当たっているだけに、何処となく身の置き所がない。
「…つまり、どういうことだ?」
瀬戸は面白くなさそうに頬杖をつきながら問い返した。
「今加州さん達が言ったのが全てですよ。関わり合いになりたくないが為に、釘を刺したんです。
釘を刺すには、それなりの説得力や信憑性がなければ効果がない。普通に言ったところで鼻で笑われて終いですから。」
「だから、本当に殺すつもりではったりをかました、と。」
レンは頷きながら、空になった皿を机に置く。
「釘を刺されて尚、噛みつこうと言うのなら、今度こそ手を下しますよ。今後の憂いを断つために。
けど、大体の輩は、これだけ釘刺しとけば先ず歯向かっては来ません。
よって、私は奴等に関わらなくて済むって寸法です。」
「…お前、マジで怖いな。」
瀬戸はぼそりと呟いた。
「あ、江藤達には言わないでくださいね。」
レンは、言いながら次の林檎に手を付けた。