第56章 七海の奪還
「止めなさい!!」
瀬戸補佐官は衝撃から立ち直り、レンの肩を掴んだ。
レンは声の主を振り返る。
「私にお前達の決まりが当て嵌められると思うな。私は私の信念の下に動く。」
レンはギロリと奥脇と江藤を見下ろす。
2人は恐怖で竦み上がった。
「私はお前達に本丸を焼かれたこと、殺されかけたことを忘れない。こんのすけにした仕打ちを忘れない。
七海を殺しかけたこと。鶴丸達を罠に嵌めようとしたことを忘れない。」
そう言ってから、瀬戸補佐官を横目で見遣る。
「やられたらやり返すのが私の流儀だ。誰に指図される謂れはない。」
「殺しだろうがなんだろうが、か?」
瀬戸も衝撃から立ち直り、レンに詰め寄る。
「当たり前だろう。殺意を向けられたなら、殺られる前に殺らなければこちらが被害を被るんだ。一々待ってなどいられるか。」
言い表せないほどの冷たく昏い瞳でレンは言う。
恐怖を通り越した悍ましさを感じる。
レンは再び、奥脇と江藤を見下ろした。
「よく覚えとくんだな。私は元来短気なんだ。これ以上やるなら今すぐお前等の大事なものを粉々にしてやる。」
心臓を握りつぶされたかと思うくらいの圧を感じ、2人はガタガタと震え出す。
「どうしたい。」
「止めないか!」
レンは瀬戸補佐官をちらりと見てから、2人に視線を戻す。