• テキストサイズ

君に届くまで

第56章 七海の奪還



「な、何だ…。何を入れたんだ…!?」

江藤は震える声で叫び、掻きむしるようにして触れられた胸を探った。

「小さな氷の結晶さ。その氷は血を凍らせながら血管を通り、徐々に臓器を凍らせて腐らせていく。長い時間をかけてゆっくりと。」

「な…に…?」

江藤は絶望を滲ませてレンを見返した。

「もって1年くらいだろうな。運が良ければ生き延びられるぞ。成功率は7割だからな。」

そう聞いて、江藤はへたりと床に座り込んだ。

「人殺し!!此奴は今人を殺したぞ!こんな残忍な者を審神者になど据えておけるか!即刻免職だ!いや、警察に突き出すべきだ。」

奥脇は声高にレンを非難した。
だがレンはそれを聞いて、声を上げて笑い出した。

「くく…。江藤は今死んでいるのか?ははは!まだ生きているぞ?私は殺してなどいない。
見ろ。どこに殺した証拠がある?」

「な…!今自分で言っただろうが!死に至らしめる氷を植え込んだと!」

「言っただけで人殺しになるのか?それがどう証拠になるんだ?
お前等だって証拠を上手く隠していたから、罪を逃れ、そこにいるのだろう?」

「そ、それは…!」

奥脇は冷や汗を浮かべて言葉を詰まらせる。
レンはそれを見て、印を組み、再び同じものを生成した。
今度は奥脇に向き直り、ひたと見据える。

「な、何だ…。何をするつもりだ!」

奥脇は、恐怖に震えながら後退りし出した。
だが、レンはそれを許さないとでも言うように、素早く間合いを詰めて、それを首元に突きつける。

「これ以上私達に牙を向けるのなら、こちらも打って出るだけだ。」

その深淵のような目と死を齎す氷を目の前にして、強気を保ってはいられなかった。
奥脇は、あまりの怖さにその場にずるずるしゃがみ込む。
膝はがくがくと揺れ、まともに体を支えられず、尻餅をついた。
ゆるゆるとレンを見上げると、無表情で冷たい視線が降ってくる。

「想像できるか?お前等の家族の身に、これと同じことが起こるところを。」

江藤は同じくゆるゆるとレンを見上げた。

前に、刀剣を魔犬の様だと思ったが、この女はその上をいく。

この女は酷く凶悪で、残忍な悪魔だ。


/ 1263ページ  
スマホ、携帯も対応しています
当サイトの夢小説は、お手元のスマートフォンや携帯電話でも読むことが可能です。
アドレスはそのまま

http://dream-novel.jp

スマホ、携帯も対応しています!QRコード

©dream-novel.jp