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君に届くまで

第56章 七海の奪還



「ふざけるな!!そんなもの偽物に決まっている!!」

レンと瀬戸のやり取りを見ていた奥脇は、認定書を横取りしようと手を伸ばすが、瀬戸に高々と掲げられ、取れず終いだった。

「この者は断罪すべきです!今すぐに国外追放を求めます!」

江藤も声を荒らげる。


その様子を見ていたレンは、これ見よがしに深くため息をついた。

「…浅宮花枝。職業は個人経営の化粧販売店オーナー。
朝9時に出社し、11時には店を出て営業回り。午後3時には銀行に立ち寄り、6時に再度店に顔を出してから7時に帰宅。よく秘書の一ノ宮って人と行動してますね。」

途端に奥脇の顔色が青褪めた。

「浅宮彩葉。大葉私立高等学校在籍。
朝8時30分に登校し、午後4時に下校。その日にもよるが午後6時30分には帰宅。主な交友関係は、高崎、日羽、尼崎の3人。あまり評判は良くないようですね。」

「な、何故…。」

奥脇は絶句する。
浅宮花枝は奥脇の愛人の名前だ。
そして、浅宮彩葉は最愛の愛娘の名前だった。

「…はっ。馬鹿みたい。」

静まり返った部屋に、七海の呟きが響く。

「私は中学すらまともに行けなかったのに。愛人の子には高校に行かせたのね。大葉私立って言ったら有名な進学校だわ。」

七海は悔しさに歯を食いしばって、ぎゅっと長谷部の服を握りしめる。
あんまりだと、七海は思う。

「…七海様…。」

長谷部は宥めるように、抱きしめていた七海の肩に力を入れる。

「江藤遼太郎、市議会議員。江藤綾乃、主婦。江藤千尋、大葉私立高等学校。浅宮彩葉と同じ所のようですね。
この人でしょう?あなた方が審神者として送り込んできたのは。」

「どこで…それを…。」

江藤も青褪めた。
家族のデータをどこで手に入れたのか。

「随分と自慢気に触れ回っていたみたいですよ。すぐ出戻ったんで、かなり嘲笑の的になっているようですね。」

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