第56章 七海の奪還
「…勿論、奥脇統括は免職処分とする。」
それを聞いてレンはほっとしたように息をついた。
「お、お待ちください!何故私が免職処分なのですか!?」
その場にいた全員が声が上がった方を見た。
奥脇本人だった。
「何の理由もなく免職処分は不当ですぞ!それならば、そこの女こそ免職処分が妥当でしょう!?」
「そうです!このような破壊行為を行い、何のお咎めも無い等、言語道断!それにこの者は不法入国者です!」
一緒に着いて来ていた江藤も声高に批判した。
「この者は国籍を持っておりません!審神者は由緒ある家柄の神気を持つ者でなければ納得がいきません!この者はまるで他所者です!」
江藤はこれ見よがしに、調査内容を纏めた書類を高々と掲げた。
「それには及びません!!」
いいタイミングで声が響いた。
見ると、息を切らした瀬戸が立っていた。
「確かに本来の手順を踏んだ入国ではありませんが、彼女は在留資格を得ています!」
瀬戸は、つい先日コネで作っておいたレンの在留資格認定書を瀬戸補佐官に突き出した。
「…え?」
レンは、思わずぽかんと瀬戸を見る。
言葉はよく分からないなりに、何かの許可を得たことは理解できた。
「よって、彼女はイレギュラーではありますが、我が国の未来を背負って立つ審神者の資格は十分にあります!」
瀬戸は奥脇と江藤を睨みつけながら、よく響く声で反論を申し立てる。
レンは瀬戸の隣に立ち、在留資格認定書を覗き込む。
所々は読み取れるが、知らない文字の羅列が並んでいて、全ては読み解けない。
「いつの間に…。っていうか、汗だくですね。」
レンは瀬戸を見上げて正直に感想を述べると、ムッとした彼に拳骨を食らった。
「てめぇのせいだろうが…!めんどーな騒ぎ起こしやがって。」
「…不可抗力だと思います。」
レンは頭を摩りながら、仏頂面で答えた。