第56章 七海の奪還
「奥脇様、これは逆にチャンスではありませんか?丁度、鴉の改良が終わったばかりです。
あの女が七海様の元に行けば間違いなく騒ぎになりましょう。それを鎮める名目で鴉を出すのです。」
「あれを出せと言うのか。それに許可なく出したりしたら首を絞めることになるのはこちらの方だ。」
鴉は凶暴だ、という印象は拭えない。
奥脇にとっては自身に牙を剥きかねない獣に等しい。
故に出来ることなら野に放ちたくはない。
「鴉の獲物はあの女です。餌があるのですからこちらに意識を向けることは無いのでは?
それに許可無く侵入し、七海様を連れ出すことは規定違反です。それは”非常事態”になるのではないでしょうか。
ならば、鴉を出すことは然程問題視されないと思われます。」
江藤の言葉に奥脇は一理ある、と納得する。
「ふむ…。まぁ使ってみる価値はあるか。」
「では早速手配して参ります。」
江藤は礼をして部屋を後にした。