第56章 七海の奪還
時々繰り出される、刀を水平に保ち3回斬りつける技が見ていて面白い、とレンは思う。
「節子様の代で、だいぶ鍛えておいででしたから。」
こんのすけは黄昏るように、レンに聞こえるくらいの静かさで言う。
加州は手傷を負うことなく、6、7人の小部隊をいとも簡単に戦闘不能に追い込んだ。
「…くそ…!」
「俺達はこれで全部じゃないぞ…!」
一人がそう言った時、扉からは更に倍以上の武装した軍団が現れた。
「…はっ。これで、お前達は終わりだ…。」
別の一人が苦しそうに言う。
レンも、この人数はさすがに黙ってはいられず、立ち上がる。
鴉の方を見ると、戦闘はまだ続いていて、キン!キン!と刀を交える音が届く。
鶴丸と大倶利伽羅は少し息が切れていそうだが、骨喰と鯰尾は落ち着いているように見える。
動きを見るに、鴉が一番疲弊していそうな気配だ。
速さも骨喰と鯰尾が格上な様子。
あの2人の手柄は大きいと見える。
彼等の戦闘に、人間は手出しが出来ず手をこまねいている。
あの様子ならば、任せっきりにしても大丈夫だろう。
「長谷部さん。」
「はい。七海様はお任せください。」
レンの呼びかけに、長谷部は頷く。
だが、加州は首を横に振った。
「レン、大丈夫だから。」
「せめて、援護します。この人数相手に無傷ではいられないでしょう?」
「しかし、主様は負傷されておいでです。」
こんのすけも止めに入るが、レンは引き下がろうとはしない。
「どちらにしろ、負傷者が増えればそれだけ全滅の危険性が増す。ならば動けるうちは出た方がいいです。」
そう言って印の構えをする。
それを見て、加州とこんのすけはため息をついた。
「もう…。言い出したら聞かないんだから。せめて無理だけはしないでよね。」
「了解です。」
レンが駆け出そうとした時、
「双方止まれ!!」
声が響いた。