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君に届くまで

第56章 七海の奪還



すると後ろから包み込む様に体を支えられた。
レンが少し後ろを振り返って見ると、加州だった。

「一人で何でもやろうとしないの。頼ってよ。」

彼は少し不満そうに言う。

「そうですよ。審神者をお支えし守るのが、我ら刀剣の役目ですから。」

加州の背を押す形で長谷部も加わる。
レンは、ふっと小さく笑みを溢した。

「なら、お言葉に甘えますか。」

それを聞いた加州は嬉しそうに笑った。

「よーし、押せ押せ〜!」

「それ!」

「頑張ってくださいませ!」

加州と長谷部の後押しもあり、難なく押していく。
やがて、押し戻される感覚は、手の中で渦を巻きながら消えていく感覚に変わり始める。
レンは一気にチャクラを練り、札に向かって流していく。

やがて、ピン、と糸が切れるような手応えがあった。
次いで前のめりに体が動く。

「解けた…?」

加州の呟きを聞いた長谷部は、目を瞠る。

「七海様!」

長谷部は、急いで倒れている七海に駆け寄り、抱き起こした。
レンも七海の元に膝を折る。

「ちょっと見せてください。」

そう言って脈を取り、呼吸を確かめる。
脈は弱く頼りない。呼吸も浅く途切れがちだ。
体温も低く、かなり冷たくなっている。

ー確か、心臓と首の後ろに大きな経絡が集中していた筈…。

レンは七海の首後ろと心臓の左側に手を置き、ゆっくりチャクラを流す。

「体を摩ってください。たぶん体が冷えてるのも原因です。」

「わ、わかりました。」

レンは長谷部に指示を出と、長谷部は急いで体を摩りはじめた。
すると、

「……う……ん…。」

七海の首が少し動いて、瞼がひくりと震える。

ーよかった。自力で起きれるかもしれない。

レンが少し多めにチャクラを流すと七海の瞼が揺れ、目を開けた。

「七海様!」

長谷部は薄ら涙を浮かべてほっと息をつく。

「…は…せべ…。」

七海は彼の名を呼ぶと、ふんわりと微笑んだ。
それを見た長谷部は、思わずぎゅっと抱きしめる。

「心配、いたしました…!」


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