第11章 バーベキュー
その間にも、箸を止める事なく、ひたすら肉を食べている。
「え〜!何でよぉ!見た〜い!」
「謹んでお断りいたします。」
「み〜せ〜て〜!」
レンの肩を揺するが動じない。
「あ、雪なら降らせてあげますよ。はい。」
そう言ってレンが氷遁の基礎の印を組むと、空中にはらはらと雪が舞う。
わ〜っ!と歓声をあげて喜ぶ乱を横目に、レンは食べ頃の野菜を自らの皿に盛る。
乱ははっとして、
「ちっが〜う!!」
と叫んだ。
一番端に居た燭台切は棒の側へ近寄ってみる。
それは氷で出来ていて向こう側が僅かに透けている。
それを抜こうと試みて見たものの、びくともしなかった。片手で握るくらいの太さだ。
成程、雄鹿の傷跡もこれくらいだった。
「凄いな。」
「本当に。主様はお強いんですね。」
いつの間にか五虎退も燭台切の隣にいて氷をしげしげと見ている。
「ホントだね。まったく、規格外過ぎるよ。」
燭台切はそう言って、レンを振り返る。
レンはまだ乱と何事か言い合っていた。
「は〜、お腹いっぱい。」
乱は片手を後ろに着き、お腹をさする。
皆も満足そうだ。
「鹿って美味しいんだね、意外だな。」
「ちょっと匂いが気になりますが、下拵えがしっかりしていればおいしい食材になりますね。私は山の幸で一番好きです。」
鹿を”山の幸”に分類するのもどうなんだろう、と皆は思う。
「じゃあ、一番嫌いなものって何ですか?」
五虎退はレンに聞いてみる。
「熊ですね。あれは狩損でした。二度と食べたくないです。」
「…熊。」
「人間が挑むモノじゃないよね…。」
常識が違いすぎる。
「さて、これだけの人数でも食べきれないものですね。
余った肉をどうしましょう。」
「あ、はいは〜い!ボク、焼いて持って帰りたい!」
乱が元気よく手を挙げて名乗り出た。
「そうですね、僕も欲しいです。」
乱と五虎退に続く様に鳴狐も手を挙げる。
「じゃあ、僕も貰おうかな。」
「そうですか。お好きにどうぞ。」
レンの許可が下りたところで、皆はいそいそと肉を焼き始める。結果、山盛りの肉皿が3皿出来上がった。
皆は満足気の笑みを浮かべている。
「…よく食べますね。」
レンは若干引き気味に言った。