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君に届くまで

第56章 七海の奪還



「霧隠れの術!」

レンは霧の中に自身の姿を隠す。

「影分身の術。」

次いで影分身を3体出した。
それぞれを四隅へと素早く配置する。

鴉はまだ動かない。
態と待っているのだろう。それ程レンを叩きのめす自信があるということなのだろうか。

「氷針殺方陣…!」

パキパキパキパキ…

見る間に霧の中に無数の針状の氷が形成される。
すると、霧が薄くなり、僅かに鴉の影を捉える。

「今だ!」

本体の掛け声で、四隅で形成された針は全方位から、鴉目掛けて放たれる。

ー逃げ場はない。
 鴉にも逃げる動作はなかった。
 全弾当たっている筈。
 これで無傷は有り得ない。

霧が晴れ、部屋の中央部で立っている鴉が現れた。
その出で立ちは、攻撃前と寸分違わない。
傷一つ負ってはいなかった。

ーそんな…。

レンは息を呑んだ。
今のが最も攻撃力の高い技だったのだ。


「「「「カマイタチ!」」」」


レンの放った術は、逆巻く風が刃となって鴉に襲いかかる。
鴉は見えない刃から守るように、腕で顔を覆う。

それを見計らったかのように、影分身の2人が飛び込むように鴉に向かっていく。

「「水牢の術!」」

一瞬の間に水の玉が鴉を覆う。
レンと影分身は急いで駆け出した。

ー捕らえた…!これで凍らせてしまえば…

レンがそう思った時、鴉が内側から刀を振るった。
水牢の術は内側からは絶対に破れない。それがレンの常識だった。
だが…、

ボン!!

水牢の術は術者ごと斬られ、破られた。

「氷柱槍!」

残りの影分身が接近戦に持ち込んだ。
初手の突きは防がれ、振り下ろした槍も防がれた。
三手目で首を狙った突きはするりと躱され、逆に胴体に切り込まれた。

ぼん!と音を立てて影分身は消えて、レンの中に情報が流れてくる。
氷柱槍の軌道は悪くなかった。

ー明らかに格が違う…。

ここは本来なら撤退する場面だ。

「カマイタチ!」

レンは、苦し紛れにカマイタチを乱発させる。
だが、さして効果は無い。

「くっ…。」

もう、これ以上の有効な中距離攻撃は思いつかない。
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