第56章 七海の奪還
いつまでも天井に留まることは出来ない。
接近戦は不利だが、やるしかない。
レンは天井から印を組みながら飛び降りると、向かってくる鴉に構える。
「風遁、カマイタチ!」
鴉に向かい、風の刃が吹き荒ぶ。
「ぐっ…!」
鴉は腕で頭を防護しながら耐える。
やはりと言うべきか、表面的にかすり傷を負わせる程度で、致命傷には程遠い。
「風圧弾!」
レンはすかさず次の攻撃を繰り出した。
けれど、露を払うように薙ぎ払われてしまう。
鴉の弱点はレンの神気だ。
ならば、と次の印を組む。
「水大砲!」
その名の通り、人の大きさ程もある水の巨球を大砲の如く凄まじい速さで当てる技だ。
大きさからも、この狭い部屋の中では逃げきれない筈だ。
レンは、鴉を近づかせないために滅多矢鱈に撃ちまくる。
狙いは水に含まれるレンのチャクラだ。
だが鴉は、擦っても、床に出来た水溜りに立っても、顔色一つ変えなかった。
ーどういうことだ…?
「君の浄化はもう怖くない。効かないようにしたから。」
鴉はレンの思考を読んだかのように答えを出す。
レンは、それを聞いて舌打ちする。
ーこんなに手こずるなら、あの時息の根を止めとくんだった…。
後悔しても後の祭りというやつだ。
ー仕方がない。
浄化が効かないなら次の手だ。