第56章 七海の奪還
――本丸にてーー
「鴉だって…!?」
鶴丸をはじめ、レンの刀剣達は色めき立った。
「はい。現れたそうです。どういう状況なのかは行ってみなければわかりませんが、主様は扉が蹴破られそうだと仰っていました。」
「つまりは、まだ少し猶予がある?」
こんのすけに鯰尾が問い返す。
「いや、そうとも限らない。こうしている間にもすぐに戦闘になるかもしれない。」
加州は焦りを滲ませる。
「けど、誰が行く?そんなに大勢では行けないよ?」
「主様は”鴉を抑えられる人を最低3人”、とおっしゃっておりました。とすると、鶴丸殿に近い実力の者が出るべきかと存じます。」
大和守の疑問にレンのこんのすけが答える。
「レン様は、わたくしにもそちらのこんのすけ殿と共同での時空間移動を望んでおられたようですので、主様の刀剣も実力がある者を送った方が良いかと思います。
ただ、気になることが…。」
七海のこんのすけは視線を落とす。
「気になること?」
こんのすけのそばにいた平野が問い返す。
「はい。七海様の”気”が殆ど感じられないのです。」
こんのすけの言葉に刀剣達は揃って首を傾げる。
「それってどういう状況ですか?」
「わかりません。それこそ主様の状態を見なければ。」
平野の疑問にこんのすけは首を振る。
「ですので、そう多くは送れません。そうですね…。精々2人が限度かと。」
その言葉に、七海の刀剣達が息を呑む。
「そんなに弱ってるんですか?」
物吉が心配そうに尋ねる。
「感じる”気”が殆どないというだけで、弱っているとは言い切れません。単に封じられているだけ、ということもあり得ますので。」
こんのすけは、心配させまいと気丈に振る舞う。
「とにかく行ってみよう。七海さんの方は、1人でもいいから決めてほしい。俺達の方から5人出してもいいよ。」
「いや、さすがに5人は多いだろう。」
強気の加州に、鶯丸は待ったをかける。
「たぶん、レンは平気だと思う。国会に行った時は、12振送ってまだ半分くらい余ってるって言ってたから。」