第56章 七海の奪還
「いいから。意識を管狐に集中して。」
「…こ、こんのすけ…?」
『いかがいたしましたか?』
レンの頭に、こんのすけの声が響く。
彼女は目を瞬かせて、長谷部を見返した。
長谷部は一つ頷いて、先を促す。
「あー…。刀剣を呼びたいんですが。ちょっと面倒な事態でして。」
『面倒な、とは?』
「鴉が出ました。奴と渡り合える人が最低3人はほしいです。」
それを聞いて、こんのすけは息を呑む。
『か、鴉ですと…!?』
「七海さんを助けながら、鴉と戦闘なんて到底無理なんで。少なくても奴を抑えるだけの力をもった人をお願いします。」
「七海様の管狐にもそう伝言をお願いします。」
長谷部はレンに頼み、レンは頷いた。
「七海さんの管狐はそこにいますか?」
『はい、おります。あぁ、そうか。わかりました!共同作業ですね!』
「そう…なんですか?」
何が”そうか”なのかレンにわからない。
『とにかく、了承いたしました。』
「急いでください。扉が蹴破られそうです。」
『お任せあれ。』
そこで声は途切れる。
「…一回も居場所を聞かれなかったんですが、大丈夫でしょうか?」
「大丈夫です。こんのすけにはあなたの場所がわかりますから。」
長谷部は困った様に笑う。
「取り敢えず、出来ることをやりますか。先ずはこの壁をなんとかしないと、ですね。」
「はい。何としても七海様を助けなければ…!」
ドゴン!!ピキ…
打撃音に混じり、ヒビが入った様な音がする。
レンと長谷部は音に振り向いた後、互いに顔を見合わせる。
「鴉が乗り込んできたら私が食い止めるんで、長谷部さんは七海さんに集中してください。」
「わかりました。」