第56章 七海の奪還
すると、桜が舞い、花びらが収束して人の形をとる。
そして、花びらが弾けると、そこに長谷部が現れた。
甚振られたのか、だいぶ傷だらけになっている。
「七海様!」
「違います。」
長谷部は実体化すると同時に勢いよく駆け寄ろうとするが、レンに即答で否定される。
「あ…。レンさん…。」
明らかにがっかりと肩を落とす長谷部に、若干の苛つきを覚えながらも、レン長谷部に詰め寄った。
「緊急事態です。鴉がそこまで来ています。七海さんを助けたいんですが、結界の様なものに阻まれてしまいます。なんとかしてください。」
「あ、主が!?」
「向こうです。」
レンは、ここより反対側を指さす。
「七海様!」
駆け寄った長谷部も同じく壁に阻まれる。
長谷部は、辺りを見回しながら手がかりになるような物を探すが、糸口が無い。
「ダメですね…!破れません…!」
その間にも扉を蹴破ろうと外から打撃音が響いてくる。
長谷部は外から漂う異様な気に危機感を感じる。
打撃音からも相当な力を持った奴だと伺える。
「レンさん、刀剣を呼びましょう。」
「え?本丸に戻るってことですか?今から?」
レンは何を悠長な、と思いながら長谷部に問い返す。
「いいえ、違います。管狐を使うんです。呼びかけてみてください。」
「…は?」
レンは困惑気味に長谷部を見る。