第56章 七海の奪還
その時…
レンの背筋がぞくりと泡立った。
下の方から、ぶわりと嫌な気が立ち登った気がする。
覚えのある”気”だ。
ーまさか…。
迷っている暇は無いと判断したレンは、分身の術を使う。
ボン!という音は、静まり返った階段にはよく響いた。
ババババン!
真っ直ぐ向かって行った2体の分身は、パシャン、と音を立てて、見張りに手も届かぬ距離で弾け飛ぶ。
その影からレンは氷千本を十数本放った。
「ぐっ…!敵襲!!」
見張りの反応が早かった。
大した痛手を受けていないらしい。
攻撃を受けたと同時に耳元の通信機で応援を呼んでいた。
その間も抜かりなく、銃弾を放たれる。
レンは舌打ちしながら、銃の弾道を避け壁を伝って天井付近まで登ると、すかさず手元を狙って、再び氷千本を放った。
「ぐっ…!」
「くそ…!」
1人は左上腕に命中。
だが、まだ銃撃は止まない。
レンは壁や天井を伝い、入り口前から離れようとしない見張り2人の周りを囲うように駆け回る。
頃合いを見て、レンはチャクラを練る。
「封魔洞!」
ダン!と壁を叩いた瞬間見張りの動きが止まった。
「な、何だ…?動かないぞ…!」
「か、体が…!動かせない…!」
彼等は思い切り力を入れて踏ん張るが、石のように固まったままピクリとも動けない。
レンは見張りの横をするりと抜けた。扉に手をかけ押すが、僅かに揺れるだけでびくともしない。
中の様子がわからない以上、無闇に破壊は出来ない。