第56章 七海の奪還
『…え?…何やってたんだ?』
新田は恐る恐る尋ねる。
「瀬戸さんと一緒に、とあることを伝える為に同行しました。」
『あ、そう…。瀬戸さんと一緒か…。』
明らかに安堵したような声音で言った後、ほっと息をついた。
「…何か?」
『いやいや〜。何でもない、何でもない。』
暴れてたかもしれない、と疑っていたなんて言えない、と新田は思う。
『あー、それより、ほら。そこ右だ。』
「え?私がどこにいるかわかったんですか?」
『まぁな。そこを左だ。外側から行った方が早い。』
言われた通りに早足で歩いていくと、日当たりのいい廊下に出た。
人っ子ひとり通っていない。
「ここ、走って大丈夫ですか?」
『普通はダメだろ。だがまぁ、人通りは少ない所だから大丈夫だ。』
それを聞いたレンは、駆け出した。
新田は、凄い速さで駆け出したレンを慌てて監視カメラで追う。
早すぎて、監視カメラを繋ぐ頃には僅かにしか姿を捉えることが出来ない。
ポイントを予測して待ち構えなければ、とてもじゃないが繋ぐ作業だけで終わってしまう。
「早い早い早い…!」
新田は全力でポイント、ポイントでカメラを合わせて確実に通っていることを確認する。