第56章 七海の奪還
レンは、補佐官の部屋を出るとすぐに予め持ってきたスマホを取り出した。
「もしもし。新田さんですか?」
『…どちらさんで?』
「レンです。」
『おー。瀬戸さんには口添えしてもらえたか?』
「しました。必ず対応するそうです。
それよりも、やってほしいことがあるんですが。今五稜郭にいますか?」
『あー…、ディスクの前にいるぞ。何でだ?』
新田は嫌そうに答える。
「調べてほしいことがあります。」
『やっぱりか…。』
がっかりしたような声で返事が返ってきた。
「すみません。緊急事態なんで。」
変わらない平坦な声音は、全く悪びれているようには聞こえない。
新田がカメラ越しで見てきたそのままのイメージだ。
『…お前さん、見たまんまだな。』
「…何の話です?」
言われた意味が分からず、レンは問い返したが、新田には言葉を濁された。
『それより、何だ?緊急事態なんだろ?』
「そうですね。七海さんは知ってますよね?」
『あぁ、知ってる。』
「その人の居場所が知りたいんです。五稜郭に拘束されていると思うんですが、場所わかりますか?」
『ちょっと待ってろ…。』
新田はそう言うと、無言になる。
カタカタカタ、カチリ、カチリ、カタカタカタ…
機械の操作音が受話器越しに聞こえてくる。
『あったあった。五芒星の塔って分かるか?』
「5棟建っているやつですよね?」
『あぁ。その北側の塔の5階にいる。なんかぐったりと倒れてるぞ。』
レンはそれを聞いて眉を顰めた。
やっぱり碌なことにはならなかった、と。
「新田さん、補佐官の部屋とどのくらい離れていますか?」
『そこまで離れてる訳じゃねぇな。補佐官の部屋の近くにいるのか?』
「さっきそこから出たばかりです。」