第11章 バーベキュー
門の外に呼び出された乱、鳴狐、五虎退は、横たわる皮が剥がれた雄鹿を見て驚き固まった。
五虎退に至ってはあまりの見た目に涙目だ。
「…これ、どうしたの?」
かろうじて乱が問うと、
「私が狩りました。」
と、レンはしれっと答える。
乱は卒倒しそうになった。どんどん審神者のイメージが崩れていく。動物を狩ってくる人間なんて、前代未聞だ。どんな生活してたらこんなワイルドなことができるのか。
「ね、ねぇ!鹿さんの首に穴開いてるよ!大きな穴!これ何!?」
乱は黙っていられず、レンに声高に尋ねる。
「あー…、それは…。」
さて、なんて答えるべきかとレンは悩む。
実の所、レンは影分身で追い立て、氷槍を出して仕留めたのだ。
実演すれば、怖がるだろうか、それとも面白がるだろうか。
どちらかというと、恐怖するところの方が想像できる。
かと言って上手い嘘も思いつかない。
ふと顔を上げると皆してレンに注目していた。
「知りたいですか?」
と聞くと一様に大きく頷く。
レンは暫し悩み、
「企業秘密です。」
と答えておいた。
ここは言わないでおいた方が吉とみる。
「…あれだけ引っ張っておいて…。」
「企業秘密…なんだ…。」
皆はがっくりと肩を落とす。
その様子を見て、そんなに知りたいものだろうか、とレンは思った。
レンは少し離れた所で、雄鹿を捌いていく。
まず、角を丁寧に落とし、内蔵をてきぱきと処理していく。ある程度の大きさのブロックにしたところで燭台切に渡す。
燭台切はブロックを棒状に切り分けていくと、一口サイズに削ぎ切りし、予め作っておいたタレに漬け込んでいく。
野菜も大きめに切って串に刺していく。
乱、鳴狐、五虎退は4つの七輪の炭に火を付け、大きめの網を掛ける。
下拵えが終わった頃には、辺りは日が沈みきり真っ暗になっていた。
「よし、食べますか。」
「初のバーベキュー!」
「野菜も食べてね。」
「たくさんありますね♪」
「…わたくしは湯揚げの方が…」
各々好き勝手言いながら早速焼き始める。
どこから引っ張り出してきたのか、燭台切が持ってきた篝火で明かり取りをし、燭台切を中心に肉や野菜を焼いてく。