第11章 バーベキュー
「ところで、2人は焼肉好きですか?」
レンはふと肉が食べたくなり聞いてみる。
「何ですか?藪から棒に。」
「好きかどうかは別として。そりゃあ、食べてみたいよね。焼肉なんてした事ないし。」
「五虎退も?」
「そうだと思うよ。」
「へぇ…。」
刀なのに感覚は殆ど人間と変わらないんだな、とレンは思う。
神様って体の中身はどうなっているんだろう…。
「だから何なんですか。」
痺れを切らした様にお付きの鳴狐が問うも、レンは既に聞いていない。
何かぶつぶつと呟きながら、ちょっと出てきます、と言ってふらりと何処かに行ってしまった。
残された乱と鳴狐は顔を見合わせて肩をすくめた。
「ボク、あの人を怒らせるつもりだったのにな。」
乱は苦笑して言った。
先程のやり取りを言っているのだろう、と鳴狐は考える。
「何故わざわざあの者を怒らせようなどと思ったのです?」
「本性を暴いてやろうと思ったんだよ。
ボクがもっと怪我でもすれば五虎退も考え直すんじゃないかって。人間なんて頼ろうと思わなくなるんじゃないかって思ってさ。」
乱は自嘲気味に笑う。
「乱…。」
お付きの鳴狐は痛ましそうに乱を見やる。
だが、パッと乱は笑顔を見せた。
「だけど、五虎退が悪い人じゃないって言ったの、ボクもちょっとだけ信じられそうかも。」
乱は少し嬉しそうに呟き、鳴狐は優しく目を細めた。
空が茜色に染まる頃、厨にレンが現れた。
「あれ?まだご飯には早いよ。」
燭台切は食材を出してきたばかりだ。
「それより、燭台切に見てもらいたいものがあります。」
レンはそう言うと、厨の外に燭台切を促す。
不思議に思ってレンの後を追うと、そこには立派な雄鹿を細い丸太に吊るしたレンと影分身が居た。
しかも雄鹿の首元には丸い穴が2、3あり、それが致命傷だと伺える。武器も持たずにどうやって仕留めたのか…。
「あの…これは…?」
燭台切が絶句していると、
「焼肉したいです。燭台切、作ってください。」
と、お願いされてしまった。
燭台切は思わず両手で顔を覆う。
出来ることは出来る。
だけど、これは女の子のやることじゃない!と叫びたくなった。
レンはそんな燭台切を不思議そうに眺めた。